もっと知りたい!シャンパーニュ
7.デゴルジュマンはなぜ大事?

「シャンパーニュの豆知識」の3.シャンパーニュの製造方法が知りたい!の中でちらっとご紹介している工程「澱引き(デゴルジュマン)」は、澱がたまった瓶口をマイナス20度の塩化カルシウムに5分程度漬けて凍らせ、瓶詰の際に栓をした王冠を外し、瓶内の気圧で澱ごと取り除く工程です。
この「デゴルジュマン」という工程、実はワインにとっても負荷がかかる工程です。せっかく寝かしつけられていたのに強制的に澱を取り除かれるからです。
さらに、「デゴルジュマン」という外科手術を行うことでワインが受けた傷が癒えるまでには時間を要します。つまり、デゴルジュマンの年月表示があるシャンパーニュだとこうなります。

【2016年9月】にデゴルジュしたものだと仮定しましょう。2017年1月の時点で手に取ったとします。平均36カ月のシュールリー熟成(澱と共にワインを熟成させる工程)をする銘柄だすると主体のヴィンテージは2013年だと推測されます。
さらに、デゴルジュマン後最低3か月後に出荷するとすれば蔵出しからほとんど時間が経っていないことになります。
場合によってはもう少し休ませてから楽しもうというような判断を下せるのです。
ポイントの一つ「シュールリー熟成」については改めて掘り下げることにして、ここで別の問題が浮上します。大手メゾンが生産するNV(ノンヴィンテージ)です。
大量生産するメゾンでは、同じ年をベースにしたNVを年に何度かデゴルジュマンして出荷します。実は、その都度ドサージュの添加量は微妙に変わっているのです(後にデゴルジュマンされるものほどドサージュ量を減らしているから)。
ということは、同じ年に出荷されたNVでもデゴルジュマンのタイミングが異なれば微妙に味が異なることになります。さらには、そもそもアッサンブラージュから異なることもあります。
もちろん、各メゾンができる限り一定の味わいや品質を守ろうと努力しているのですが、そんな事情から「デゴルジュマンの年月表示がないNVは評価しない」と公言する評論家も現れています。自身が評価したものと同じロットかどうかわからなければ、その評価が消費者にとって意味をなさないとの考えからです。
RM生産者はデゴルジュマンの 情報開示に積極的だという傾向があります。もちろん大手メゾンでもデゴルジュマン表記しているところもありますが「賞味期限や瓶詰年月と混同してしまう恐れがある」として消費者が混同しないようにしたいとの配慮を理由に表記していないメゾンも多くあります。

この問題を上手に解決した一例が「クリュッグ」です。全銘柄で2012年以降裏ラベルに6ケタの数字のIDを記載。WEBサイトかスマホアプリでデゴルジュマンを含む詳細情報が確認できるようにしました。
(ちなみに最初の3ケタはデゴルジュマンの年月だそう。)
その後に続く3ケタの数字の下2ケタが西暦の下2ケタを示し、頭の数字は1年を四分割した季節を表すんだとか。
「ルイ・ロデレール」も裏ラベルに記載されている14ケタの番号またはバーコードから情報が得られるサービスを行っています。
デゴルジュマンの年月が解れば、わかるシャンパーニュの情報が増えることになるのです。購入する際、それがいつ造られたものかがわかるだけで推し量れる情報は格段に上がります。もしかしたらとんでもなく熟成しているシャンパーニュかもしれない...なんてことも起こりうるかもしれません。
ぜひお手元にある、もしくは店頭や飲食店で見かけたシャンパーニュで確認してみてください。