TSUZAKIレポート

秩父蒸溜所 訪問レポート

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2011年1月下旬ベンチャーウイスキー社の秩父蒸溜所を 約2年半ぶりに訪れた。 前回当然ながらほぼ空だったウエアハウスも、いまや熟成中の樽でほぼ一杯の状態までなり、いよいよ秩父蒸溜所としての本格的なシングルモルトリリースへ向けて準備中の同社代表の肥土伊知郎氏にインタビュー。 設立三年目となった秩父蒸溜所の「今」に迫ってみたい。

熟成中のウイスキー

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いまウエアハウスに入っている樽はおよそ1200丁です。 仕込みや樽の違いによって個性はそれぞれなのですが 今のところの印象で言えば 「全体的に素直で使い勝手が良い」・・・のではないかと思っています。

もちろんすべての樽を定期的にテイスティングしました。 大まかにではありますが三つのグループに分類しました。

第一にこれから樽を移し変えてゆく予定のグループ。第二に長期間熟成させるグループ。第三に比較的早い時期にリリースさせるグループ。まだまだおおまかではありますがこのように分類できるまでにはキャラクターが把握できてきました。第三のグループから最初の秩父シングルモルトとしてリリースされる樽が選ばれるでしょう。

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秩父蒸溜所のこれからやりたいことはたくさんありますが、すでにウエアハウスも一杯になりつつありますので、もう一棟の増設を検討中です。この用地はすでに決定しています。

あともう一つ大きなプロジェクトはモルティング用の建物の建設です。これが完成すれば、ウイスキー醸造に係る全ての工程を自社内で完結できる体制が整います。



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全て可能といっても実際はコストの面でも9割以上の麦芽は当然ながらモルトスターから買い付けたものにせざるを得ないでしょうが、仮に全体料の1%だとしてもフロアモルティングを行うことで完結したウイスキー工程が整うということの「意義」は非常に大きいことだと思っています。

「秩父の麦」と「秩父のピート」から作り出されるウイスキーなんて飲んでみたいじゃないですか。(笑)

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また、当社のように非常に小さな蒸溜所だからこそ分業化の進んだ大手では出来ないこともあるかも知れませんから(笑)。

実はある大手のメーカーの技術者が「ここは全ての工程に携われることがうらやましい。ウチの若手を研修で受け入れてくれないか。」 とまあ半分冗談交じりにですが言われたこともありますよ。

先程もちょっと話に出たのですがフロアモルティングも毎年スコットランドのモルトスターで研修を受けることにしているのですが、やはりこれも職人技の世界で非常に奥が深く、ようやく自分達が何が判っていないのかが判ってきた。というレベルですので修行は当面続けてゆきたいと思っています。

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秩父での麦の作付けも多くの方の協力の下徐々に増えてきています。当初は本当に無謀な試みといわれたことも多いのですが、ここまでくれば実際はあっという間な気がしています。

いずれにしても2008年に稼動をはじめた秩父蒸溜所も三年目となり、国際的な基準に照らしてもシングルモルトウイスキーを名乗ることができるボトルをリリースできるようになります。いまのところ仕上がりはまずまずです。当初から狙っていたものに近い味わいができている、という実感はあります。

とりあえず「1stビンテージオブ秩父」としてのリリースという第一歩を刻むことになります。

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全体を俯瞰できるとはいえ一つ一つの細かい作業についてはまさに職人技の世界ですので、それ相応の時間がかかる世界で。蒸溜所が出来たからといって思い通りのウイスキーがすぐにでも仕込めると言うわけには行きません。

そういう意味ではとにかく技術の集積が最優先事項でしたから、立ち上げてから今ままでは全員で全体的なことをじっくり覚えてゆくワケには当然いきませんから、スチルマン、マッシュマンといったように他のことはとりあえず後でいいからまずその部門の仕事をしっかりと覚えて他の人間にも教えられるようになってくれるようにと集中的に覚えてもらいました。

皆それに良く応えてくれまして少しづつですが教えられるレベルに達してきていると思います。

300回の仕込まで・・・

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ピートタイプのモルトについては最低でも300回の仕込み(だいたい一年)を越えるまでは一切行わないと決めていました。やはりピートの影響はご存じの通り実に大きいため仕込みのどの行程をどう行えばどういう原酒ができるのかというデータが見えにくくなってしまいますから。

「なんとなく作ってなんとなくいい物ができた」では再現性もなく技術の集積としてはまったく進捗がないということになりかねませんからね。もちろんウイスキー醸造の行程は基本的には誰でも知ることができますし、使用する機械にはマニュアルがあります。

しかしその通りにできることもできないこともありますので、「このままでは使えない」だったりとか「おおマニュアル通りにいったぞ」という試行錯誤をしながら全員で経験値をあげてゆくしかないんですね。

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まあだいたいの場合マニュアル通りにはいかないことが多いですけどね(笑)

実際にやっていると本当に面白いですよ。一回目の仕込みより二回目がよりヘビーになることがありますがこれは銅イオンの溶出量が少なくなることで起こる現象で知識としては知っていても実際目の当たりにするとですね、「なるほどこういうことか!」と感心しますね。

だから安定的な酒質の再現には少し休ませてから蒸留するとか。再留釜を洗うのはとりわけ注意が必要とか。冬の仕込みはヘビータイプができるとか本当にいくらでも挙げられます。


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今では一つ一つの事象に対する科学的なアプローチが可能ですので、論理的には目指すところの原酒に迫る方策を見出すことができるのですが、昔の職人たちは経験則でものづくりをする他なかったでしょうから、本当に大変だっただろうと思います。

伝説的に語られる「ポットスチルを新調するときは小さなへこみ一つまで忠実に再現させた」というエピソードなどウイスキーづくりを実際にやった今では心情としては非常によくわかる気がしますね。ここ秩父の原酒の味わいとして、いままでリリースしたニューボーンなどでいただいた反応で多かったのは、非常に若いのに熟成感があるというご指摘でした。

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これも熟成に用いた樽がどういうものかと言うことも影響はあるとは思いますが結局は仕込みの段階での造り込み次第なのです。とくに短期でのリリースの場合カットポイントが遅かったものは刺激のあるいわゆる未熟香が残ってしまいますから、ちょっと飲みにくくなることが多いようです。

もちろんこれも匙加減が大切で早すぎても遅すぎてもだめなんですよね。とにかく一人一人のちょっとした作業の一つ一つが、良くも悪くも全体に非常に大きな影響を及ぼしてきます。

幸いにしてここに集まったスタッフ達は全員が「大のウイスキー好き」であるということが大きいですね(笑)

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スタッフ一人一人が作業員ではなく職人であるということこれが秩父蒸溜所のもっとも重要な要素だと思います。

まもなく秩父蒸溜所の「シングルモルト」第一号がリリースされますがこれはいまはもうない羽生蒸溜所とここ秩父蒸溜所を繋いでゆくという使命を帯びた「イチローズモルト」といういわばブリッジブランドの確立に向けた大きな一歩となると思っています。

仕込みごとに日々スタッフも含めてテイスティングを行っているのですが非常に面白いなと思うのが「おっ今日は結構ヘビーな感じだね」とか意外と同じような感想を持ったりすることが多くなりました。

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テイスティングの能力も先天的な才能として語られることが多いのですが、実は訓練次第で相当程度は修得できるものだと感じています。

全員本当にウイスキーが大好きなのでそれが一番かもしれませんけど(笑)

そうそう今度リリース予定のサンプルを今からテイスティングしてみませんか。


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