TSUZAKIレポート

ジャパンインポートシステム社主催 ヘイマン・ジンセミナー 

Deep Sessions ロゴ
店長・宇戸田がお邪魔したのは福岡会場でした。2部構成のセミナーは2部共に参加者の皆様で一杯になりました。今回のセミナーで講演したのは、ジン業界の生き字引にして現役のジン生産者。曽祖父がビーフィータージンの考案者というジン家系で、現在、2人のお子さんとヘイマン・ディスティラーズ社を経営。ロンドンでも最後の家族経営のジン生産者でもあります。日夜ジンの発展と普及に努めています。そんな氏が来日し講演を行った貴重なセミナーです。

ジンの歴史



まず、ジンの歴史から簡単にご説明していきたいと思います。
ジンはオランダで生まれた飲み物です。だいたい1500~1600年に誕生しました。そのジンがロンドンに上陸したのは、1650年頃以降といわれています。オランダでジンを発明した人物は、シュルベース博士といわれています。このジンの語源は、オランダ語の"ジュメイバー"。ジュニパー・ベリーのことを指します。このジュメイバーという言葉が短くなって、ジンと呼ばれるようになりました。

ジンの蒸留 ポットスティル


当時のジンはおおむね小麦、ライ麦から作られていたといわれています。今日皆さんが味わっていらっしゃるようなすっきりした非常に滑らかで口当たりのジンではなくて、非常に荒々しい、当時は蒸留技術もまだまだ発達しておりませんでしたので、荒々しい強い味わいのものだったといわれています。

英国では、ウィリアムⅢ世の治下でございましたけれども、このウィリアムⅢ世はジンを大変気に入りまして、"ジンテンプル"=ジンの大御所といわれるくらいジンが好きだった人物のようです。


当時のロンドンのパブの様子

もともとは薬として発達したジンなんですけれどもロンドンでは非常に人気を得まして、1730年当時はロンドン市内に7000店舗のジンのお店があったといわれております。 1750年にはショッピング街20%以上何かしらの形でジンを扱っていたお店が増えていたといわれています。

昔のロンドンの風景をあらわしているイラストには、そこら中でジンを飲んで酔っ払っている人たちを描いているものがあります。当時、ジンは社会的にも安価なお酒だったので特に労働者階級の人々が好んで飲んでいたといわれています。 これほど人気を博しているアルコールというものを国がほっておくはずもなく、徐々に酒税の取り方とともにジンの造り方も確立されていくわけですけれども、そうして国が介入する形となったことで向上してきていたジンの蒸留技術とあいまって現在皆さんがあじわってらっしゃるようなジンになってきたわけです。

当時のロンドンのイラスト

この当時に飲まれていたジンは、ドライジンではなく、オールドトムジンといわれるものでして、皆さんの目の前においてありますボトルですが、若干甘みのついたジンでございました。このジンが非常に人気が高まったのも世界で初めてといわれる自動販売機システムによって拡販されていったといわれています。


当時のロンドンにパブがひしめく狭い通りががありまして、その中の「ブルーアンカーアリー」というパブがこの自動販売機システムを確立したといわれているのですが、店の外側に黒猫の形をした木製の看板をつけて口にお金を入れると、店の中にいるバーテンダーが外にいるお客さんにチューブを通じてジンを注いで販売するというシステムを確立したといわれています。
これは、店の中でジンを動かしているのは人間ですが、外にいるお客さんはお金を入れただけでジンが買えるということで世界初の自動販売機システムだといわれています。

またもうひとつ、トゥルーリーレインと呼ばれるロンドンの通りがありまして、当時はジンの製造業者が多くおりまして、そこでは大きな樽にジンを保管して販売していたといわれています。その樽のことを「バット」とよばれていました。ここにあるキングスバリーのバットジンのバットにも使われております。
トゥルーリーレインの近くに今日本でも非常に有名なトニックウォーターやソーダを造っているシュウェップス、ジェイコブ・シュウェップスが住んでいたといわれています。

このジンを飲む文化からソーダやミネラルウォーターを販売して、世界に知られるような会社にしました。 このような文化が1800年代はじめになって上流階級にも浸透していきまして、スタイリッシュな飲み物カクテルなどに使われるようになっていきました。


カクテルの歴史とジン



このカクテルという言葉は150年以上使われていますが、ニューヨークにある「フォーコーナーズイン」=4つの角になる居酒屋という名のお店から発展したといわれております。
このフォーコーナーズインのバーテンダーがバーボンやアメリカンウイスキーをフレッシュジュースと混ぜるときに使ったのがそのときかぶっていた帽子についていた尾羽だといわれているんですね。ここから鳥の尻尾をさす「カクテル」という言葉が出来たといわれています。

1850年に特にアメリカでカクテルブームが起き、同時にそれを反映して冷凍する技術も発達してきて冷やしてすっきりさっぱり飲むお酒が浸透したといわれています。
1866年のシカゴの記録なんですが、このとき世界で初めてバーテンダーの協会が出来たといわれていて、当時で900もの支部があったといわれております。40冊近くカクテルに関する文献が発行されまして、カクテルという文化がいかに米国に浸透していたことを表していることだとおもいます。

ジュニパーベリーハーブangelicaレモン

カクテルの流行の流れというものがイギリスにも移りまして、ジンを使ったカクテルがどんどん人気を博していきました。1929年、イギリスでは最も有名だといわれている「サボイホテル」のカクテルブックが発行されまして、その地位を確立していったというわけです。

1920~1930年にカクテルブームがどんどん勢いを増して、それまでは仕事が終わってからすぐ家に帰ってご飯を食べるという生活スタイルだったのが、夕食が非常に短いのでその前後に一杯食前酒なり食後酒を飲むという文化が発展していったといわれています。
このカクテルブームが発展することでジンのセールスも自然と上昇しまして、アメリカでは酒税法などでカクテルブームが徐々に落ち着きましたが、イギリスでは第二次世界大戦が終わるまで続いたといわれています。

やはり、英国でもジンのカクテルとしてよく知られているのがジントニック、マティーニ、トムコリンズ、この3つが代表格です。

ジンの原料~ボタニカル




では、そのようなジンが今どのように作られえいるのかについてお話していこうと思います。原料はボタニカルといわれるものがメインになっております。ジンの原料はそのボタニカルという言葉でくくられることは多いのですが、ボタニカルというのは、スパイスであったり、ハーブであったりとさまざまな植物に由来する原料を総称してボタニカルと呼んでいます。そのボタニカルの中でもジンの原料として最も大事でよく使われるのがご存知、ジュニパー・ベリーです。ジン特有の香りをうつしているのがジュニパー・ベリーに由来する香りです。
ジュニパー・ベリーの香りというものは、ジンそのものをご想像していただければよく分かるのですが、やしの木に似ているような香りをしております。

次に大事なのがコリアンダーというハーブです。こちらはインドでよく造られておりまして、徐々にイギリス産のコリアンダーも作られてはいますが、この二つが非常に大事です。

本日お持ちした中でももうひとつ、アンジェリカというハーブなんですが、これはセリ科の植物でして、せりのように香りの強い植物で主にベルギーで生産されています。

だいたいこの3つがジンの製造に多く使われるのですが、もちろんジンの味わいはそれぞれですので使うスパイスやハーブも異なり、われわれもそうですがそのレシピは、ビーフィーターと同じように秘伝のレシピといわれています。
全部でジンに使われるスパイスやハーブは40くらいあるといわれているのですが、もちろんその中の7種類しか使わない人もおりますし、20種類以上使う人もおります。
その中にどんなものが含まれているのかというと、オレンジピール、ジンジャー、レモンピール、カンゾウ、リコリス、イチハツという物が使われたりします。

それに、ひとことでジュニパーといっても自分たちのジンにどのジェニパーが合うのか厳選しなければならないんですね。わたくしたちもジェニパーを選ぶときには30種類くらいのサンプルを取り寄せて、実際にそれぞれのジェニパーを使って蒸留してみるのです。そこではじめてどのような影響がジンに移るかを味をみまして最適なものを選ぶようにしております。もちろん、ジュニパー・ベリーも農作物ですのでいい年もあれば悪い年もあります。その点を考慮してヘイマン社では2年分くらいの在庫を常時しております。

ジンの原料~ホワイト・スピリッツ




このようにジンは原料ひとつで味わいや品質がガラッと違うものだということがお分かりいただけたかと思います。その後にどのようなスピリッツに蒸留していくかということで水も非常に大事なものだといえます。

ジンを造っていく一番最初に使われる中性スピリッツ、ホワイトスピリッツという液体ですね、こちらを厳選して良質なボタニカルの良さを最大限に引き出せるような中性スピリッツを選んでおります。厳選した中性スピリッツと加水の際に使う水も大事であると申し上げましたが、実際にイギリス各地の水を味わってみると味が全く異なります。ですので、私どもではジンの原料であるボタニカルとそのボタニカルを浸透させる中性スピリッツ、ボトリングの際、加水に使う、この3つをジンの品質の大きな柱として捉えております。

ジンの蒸留のプロセスを説明いたしますと、厳選したボタニカルと厳選した中性スピリッツを一緒に入れてその成分を浸透させていきます。だいたい24時間くらい浸透させたものを蒸留してコンデンサーに入れてボトリングをしていくという流れになっています。このようにポットスチルで蒸留される場合はヘッドとテイルをカットして真ん中のスピリッツだけを取り除くようにしています。

システムはまったくモルトウイスキーと同じですので、ヘッドとテイルというのはやはり雑味が出てしまうんですね。それは商品に回さず、次回の蒸留にまわして味わいを調えるようにおります。このヘッドとテイルをカットするそのタイミングというものはスティルマンの嗅覚一つにかかっております。そのように真ん中の品質が一番安定している一番味わいがふくよかな部分をコンデンサーで液体に戻してボトリングに回していきます。
ですから、スティルマンの嗅覚、どのタイミングでヘッドやテイルを切るかというのはマニュアルなどないのでその人の経験と嗅覚で決められているといっても過言ではありません。


ジンの説明と試飲




このようにジンが造られているのですが、本日ご用意したボトルはジャパンインポートシステムで取り扱っている様々なジンです。簡単にひとつずつ説明してまいりたいと思います。

ヴィクトリアンバットジン



まず、一番代表格なのがキングスバリーのヴィクトリアンバットジンです。こちらはジュニパー・ベリーを通常の二倍以上使用しておりまして、非常に力強い香りがとてもユニークな商品です。また、先ほど申しましたようにビクトリアンバットのバットは樽のことをさします。このビクトリアンバットジンは、ステンレスのタンクが発明される以前はジンというものは樽で保存されておりましたので、その伝統を踏襲しているといえます。、樽で熟成がされているので若干琥珀色をしておりまして、まろやかな味わいになっていて、古きよき味わいというものが再現されています。
この樽で熟成することによってシングルカスクという発想もできますので、ひとつの樽からボトリングされる非常に珍しいジンだといえます。

オールドトムジン



次にご紹介するのがヘイマン社のオールド・トム・ジンです。さきほど若干勉強いたしましたけれどもこのオールド・トム・ジンというのは甘味を加えられているジンです。この理由というのは、1800年当時のお酒は非常に荒々しいラフなお酒であったといわれておりますので、それをもっと飲みやすく、まろやかにしようと甘味を加えられました。非常に繊細な味わいを楽しめると思うのですが、ただ甘いだけではなくジンのいろいろなボタニカルと甘さのバランスをお楽しみいただければと思います。こちらはまさに私の父親の秘伝のレシピを再現しておりまして、若干甘味が強いかと思いますがそれこそが本来のオールドトムジンの味わいということができます。

ピムリコジン



こちらのピムリコジンは、オールド・トム・ジンと対極にあるロンドンのドライジンです。
57度という非常に高い度数をもっております。このピムリコというのはロンドンの一部をさすエリアの総称でして、むかしピムリコという地方があったということからロンドンで作られているジンということで、ピムリコジンと名づけました。度数のとても強いところから凝縮感を味わえるジンだと思います。その香りにしてもボディにしても非常に強い味わいを持ったジンでございます。

また、そのほかにもボトラーによってボトリングされたジンもあります。

bloomsbery



このブルームスバリーのようにオレンジやレモンのフレーバーをつけたフレーバー・ド・ジンというものもあります。実は、ブルームスバリーというのも昔のロンドンの一部をさすのですが、このブルームスバリーという場所でロンドンで初めてジンが蒸留されたとする文献もあります。

ジュネバジン



また、本日は今までお話したロンドンのジンとは異なるカテゴリーに属するのですが、オランダ、バンフィーのジュネバ・ジンをご用意いたしました。どちらかというと、このジュネバ・ジンというのは今現在生産されているロンドンのドライジンとは違い、モルトウイスキーと同じような概念で造られたジンです。

本日は7種類を皆様に比較試飲していただけるようにご用意いたしました。ぜひ目の前のボトルを開けて試飲してみてください。

(7種類のジンを試飲開始!ヘイマン氏の説明を聞きながらじっくり試飲)


このように7種類のジンをご用意したのですが、今回私どもでオススメしたいのがキングスバリーのヴィクトリアンバットジンとオールドトムジンです。 こちらは伝統を復活させているということで強くオススメしたい2つです。

どちらも製法も味わいも昔を復元しているものではありますが、今回はビクトリアンバットジンを使いましてジントニックを実際に試させていただきたいと思います。

(ヘイマン氏自らが参加者の前で実際に試飲。)


今、バー アンジュの阿南様にご協力いただきまして(本当に急なお願いだったのですがありがとうございました。)実際にジントニックを作っていただいております。このビクトリアンバットジン、一番強調したいのはジュニパー・ベリーを通常の2倍以上使用しているという点でございます。カスクで保存していたことで当時のジンも保管していたことで熟成して琥珀色をしていたと創造できますが、このビクトリアンバットジンも足る熟成をさせ入るのでこのようにクリアな色ではなく若干琥珀色をしています。熟成期間は大体3ヶ月から4ヶ月くらいかけて行っております。
実際に阿南様に作っていただいたジントニックを味わってみましょう。

昔味わったジンの味わいを復元されていると感じることができます。

実は1800,年代と900年代の作られてジンのトニックというのはほとんどはオールドトムジンで造られてといわれております。この当時に書かれた有名なカウテルブックでも紹介されているジンカクテルのほとんどがオールドトムジンで作られています。いかにオールドトムジンが当時はやっていたかということが証明になると思います。

では続いてオールドトムジンでもトムコリンズも試してみたいと思います。

実際に阿南さんに作っていただいたトムコリンズもまさにオールドトムジンで造られた昔ながらのあじわいとおもいます。トムコリンズはオールドトムジンを使ってこそのカクテルだということができます。

ginseminer


最後に




本日は本当にお忙しい中ご来場いただきましてありがとうございました。実際にこのような違った種類のジンをお楽しみいただけまして、また、同時に弊社のヘイマン オールドトムジンをお楽しみいただけましてその品質その味わいを実感していただけたかと思います。

最後に申し上げておきたいのは、ジンというものはどうしても大量生産のような商品に捕らえられがちなのですが、そうではなくて家庭に伝わるジンを伝えていく情熱を持った人たちがいるということを皆様に知っておいて頂きたいと思います。私も今実際ジンを作っておりますし、その情熱は息子のジェームスと娘のミランダという2人の子供に引き継がれております。この情熱を持ってジンの一番魅惑的な秘密のレシピを持って今後ともジンを造って生きたいと思っております。

40年間ジンの製造に関わってきたと申し上げましたが、いまだに日々毎日新しい発見があるくらいジンの製造、蒸留というものはおくが深いものだと思っております。
そのように経験と情熱を持って造られているヘイマンのジンですので、皆様にもお使いいただく際に皆様にも新しい発見、驚きをお届けしたいと思います。この情熱に支えてられて造られているジンですので、皆様のお店でお使いになる際でも品質には問題なく自信を持ってお使いいただけることと思います。

これらのジンを使って新しいスタイルの新しいカクテルが生まれることを祈っております。いまだに子供たちに伝えようとしていることがキングスバリーのビクトリアンバットジンとオールドトムジンの2つのジンで皆様に実感していただけると思います。この2つのジンの特に長いジンの伝統を復元したということをしっかりと心に留めていただいて本日のジンセミナーを終わりにしたいと思います。

本日は本当にありがとうございました。

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